rehay_jishin on Twitter リハビリ医療と東日本大地震を考える

介護施設の苦境(リハ医の独白より)
『リハ医の独白』が更新されています。
http://d.hatena.ne.jp/zundamoon07/20110419/1303226382 

介護施設の苦境Add Star

 東日本大震災に伴い、要介護者を多数受け入れた特養などの施設が苦境に立たされている。

 東日本大震災から1カ月たった今なお、特別養護老人ホームの孤立が続いている。震災直後の混乱期には、体調を崩すお年寄りが急増。被害が小さかったホームは、被災施設から高齢者を受け入れ、定員超過の中で、少しでも入所者の生活環境を良くしようと必死だ。被災地が少しずつ秩序を取り戻す中にあっても、入所者と施設職員の心労は癒えない。

河北新報 東北のニュース/特養ホーム苦境なお 支援の手 後回しに

 具体的な事例として、次のようなものがあげられている。なお、( )内は当院の介護担当責任者が各施設に電話をして収集した情報である。

  • 震災直後には、特別養護老人ホームに入所する高齢者の死亡や体調の急変が相次いだ。突然のライフライン断絶と物資窮乏が、震災弱者のお年寄りを直撃。(以下は『リハ医の独白』ブログをご覧下さい。)


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避難所生活の長期化がもたらしたもの(MRIC by 医療ガバナンス学会より)
避難所生活の長期化がもたらしたもの

 

石巻赤十字病院

植田信策

 

2011418日 MRIC by 医療ガバナンス学会 発行  http://medg.jp

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震災から5週間が過ぎました。以前報告したときから避難所や医療を巡る状況は刻々と変化してきました。その中で、市街地でありながら電気、水道など未だに復旧できていない地域があり、そこの風景はほとんど変わっていません。むしろ余震による追い討ちで倒壊した建造物が増えたくらいです。沿岸部の地盤沈下により、満潮になると水没する地域があり、水の中を移動している住民の姿はまるで被災直後のようです。

このような状況で避難所生活は長期化することが確定的となっています。

 

先週末、石巻赤十字病院のDVTエコー検診チームと東北福祉大学リハビリテーション学科佐藤教授チーム、宮城県理学療法士協会合同で避難所と周辺住民(1階は水没したが2階は辛うじて生活できる住宅に居住する被災者)約900名を対象に要介護度の調査を行ったところ、3%近い被災者が介護を要することがわかりました。石巻市内の他の地域での小規模な調査でも同様の数値が出ています。この中には、震災前後で自立から要介護に変わった方もいます。原因は身体を動かす意欲がない、床から起き上がるのが困難なため動かせなくなった、怪我や体調不良を契機に筋力低下を来たした、ことなどのようです。

現在石巻市の避難所は142ヶ所、そこに約17,000名の避難者がいます。そのうちの3%が要介護者であるとすると、その人数は約500名です。これだけの人数の介護をするとなると、介護ニーズがある避難者の集約や、施設の確保、介護スタッフの確保など、多くの課題に介入していかねばならないと合同救護チームでは考えています。

 

高齢者に対する健康被害を防ぐ手段として被災地外への一時移住などが提案され、南三陸町ではすでに県内の栗原市に一部移住が始まっています。石巻市では避難所住民に対し今月初めに意識調査(回答世帯数4,186、避難者数にして12,338人)を行いましたが、68%が移転に対し「興味がない」と回答しました。これ以降、域外移転に対して石巻市が積極的に動いているという話は聞きません。移転することで生活の立ち上げになんら不都合は生じないと説明することや、移転先と石巻市間の定期的な移動手段を確保することなどで、被災者が安心できるよう工夫すればいいのにという思いはありますが、市役所からこれに関する方針は示されていません。

 

現時点で寝たきり高齢者の繰り返す誤嚥性肺炎が多数病院に運ばれています。今後も避難所生活が長期化し、要介護者への適切な介入がなければ循環器疾患、呼吸器疾患、脳血管障害、深部静脈血栓症、肺血栓塞栓症などの発症が増加することが予想されます。

 

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独立行政法人国立長寿医療研究センター 近藤和泉先生より現地リポート(4月18日)

日本リハビリテーション医学会HPより許可を得て転載


4/94/13の当院からの災害派遣(岩手県山田町_山田南小学校)と、その翌日に被害が特に大きかった宮古市鍬ヶ崎地区に行って参りました。簡単に現地の状況を報告させていただきます。

長寿医療研究センターからの派遣は第二陣で、チームの構成は医師(近藤)1、看護師1、薬剤師1、事務職2でした。仕事は、山田南小学校の災害時臨時救護所における診療活動です。診療は外来だけではなく、入院扱いとなる隔離が必要な感染症(インフルエンザ、感染性胃腸炎)および介護ニーズがある高齢者およびHD患者などの回診・管理などでした。診療は国立病院機構がローテーションを組んで派遣している他の2チームと、北海道医療振興財団から派遣の医師1名、さらに北海道の医師会を通じて派遣された手稲溪仁会病院の1チームが協力して行いました。

現在、震災・津波被災の直後とは異なり、現地の医療機関の診療活動が徐々に復活し始めている状況ですので、外来患者も私が行く直前の200250/日から減少し始めており、診療を担当した3日間は、104名(日曜なので少ない)、175名、131名と徐々に少なくなって来ています。医療支援の形も、災害直後の救護所活動から、診療を再開した医療機関への医師の派遣に切り替えるフェーズとしてのニーズ高くなってきています。

災害派遣の形が、一般派遣でリハ科としての診療を提供するものではなかったので、特にリハニーズが大きい方に限定した診療は、ほとんど行いませんでした。このため、学会で用意していただいた調査シートは使用できませんでした。また避難所の生活環境が悪いこともあり、ケアのニーズが高い方は、避難所では生活出来ません。加えて、チームの看護師が1名だったために、当直業務のカバーを行わなければならず、2日目の夜はほとんど眠らずに感染性胃腸炎の子どもの管理や摂食介助などを行っていました。

今後の見通しとして、地域の医療施設の復活により、内科・外科などの基幹となる医療は提供でき始めているものの、よりマイナーな小児科・眼科・耳鼻科などは、元々医療を提供できる診療所の数が限定されていところへ被災して、亡くなってしまった方もおり、医師自体の数が減少しています。このため診療を再開した医療機関へ、特定のニーズがある専門性の医師を派遣するか、あるいは、被災しなかった医療機関へ通院するための交通手段の確保が必要とされています。

避難所に付属した救護所では、検査やレントゲンを撮ることもできず、医療行為自体も限定されていましたが、同じくリハおよびケアニーズが大きい方は、基本的に避難所での生活は困難です。このため、こういった方の病院ないし施設収容を一時的にも考える必要があります。当院では、看護師不足に伴って、一時閉鎖した病棟を被災した老健に使ってもらい、スタッフおよび入所者を丸ごとこちらに移ってもらう計画を立て、募集を始めています。

学会としては、今後、患者さんを個別に受け入れる病院の情報を提供するだけではなく、施設を丸ごと移転する形で収容し、失われた地域のケアを肩代わりする橋渡しをしても良いのではないでしょうか? リハの医療の部分だけではなく、ケアの部分にも目を向けた支援が必要と考えています。

以上、簡単ですが、現状報告に加えて、私見を述べさせていただきました。

独立行政法人国立長寿医療研究センター 近藤和泉

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いわてリハビリテーションセンター高橋明先生からのレポート(リハ学会HPより)
(日本リハビリ医学会HPより許可を得て転載)

いわてリハビリテーションセンター高橋明先生からのレポート

 

高橋@いわてリハビリテーションセンターです。

3.11から1ヶ月が過ぎ、岩手県の状況も大きく変化してきています。

沿岸の被災地ではDMAT対応状況から非日常の生活が持続することから生じる感染症やいわゆる生活習慣病の誘発、持病の悪化などに移り、医療需要は質を変えながらますます増大。一方、難を逃れた医療機関・介護福祉関連施設も活動を活発化し、周辺の介護予防活動に乗り出す余裕も見せ始めています。

流失した病院や施設から救出された方々は早々と関連病院や内陸の施設に移され、避難所に難を逃れたが次第に不活発になっていった方々に対しても次々に対策が講じられ、一部を除いて初期の混乱は幾分治まったかのようにみえます。

こうした中で仮設住宅の建設開始は何よりの朗報ではありますが、県央部の旅館・ホテルへ身を寄せた方々についても同質の問題が浮上する懸念が生じてきたように思います。それは、阪神淡路大震災の時にも問題となった『仮住まい症候群』の初期症候です。

食事・排泄・入浴・整容・休息・睡眠などすべての生活活動を居住環境・人間関係など今までと異なった環境、非日常的な環境のなかで行わざるを得ないという状況。極めて強いストレスが続く生活を余儀なくされた場合、最初に血圧の変動や不眠、うつ状態など情動変化があらわれるようで、当センター看護部による実地調査でも既にその兆候があらわれています。

つまり第二段階に入った現在、われわれの“戦線”は沿岸被災地と内陸避難地との2つになっており、後者も1カ所ではなく繋・雫石温泉郷と花巻温泉郷、八幡平温泉郷の3カ所となっており、両戦線とも長期化が予想されていることから、どのような対応が現実的かを考える必要に迫られています

 


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東日本大震災へのリハ対応に関する中間報告(4月11日発)(藤本幹雄先生)

日本リハビリテーション医学会HPより許可を得て転載

http://www.jarm.or.jp/ic/ 


 千葉県旭市や周辺地域における

      東日本大震災へのリハ対応に関する中間報告

国保旭中央病院 リハ科 部長

藤本 幹雄

 

旭市(人口7万人)の被害状況は平成23411日現在で、死亡13名・行方不明2名・全壊427棟・半壊335棟・避難所生活者230人となっています。

国保旭中央病院リハ科では、314日より避難所へのリハ調査・介入を開始しました。この時点では避難所生活者700人程度で推移していました。315日に避難所をリハ医が巡回した際には、要介助者のほとんどは市内の施設に緊急入所できましたが、避難所生活者に歩行やトイレ、移乗等に介助を要する避難者が5名残ることになり、さらに活動の減少による機能低下が懸念される避難者が36名いました。それらの避難者に対して保健師がそれなりに活動を保つように助言してくれていましたが、明らかに十分な活動が保たれているケースはありませんでした。その意味ではリハ医が巡回指導する意義は大きいものでした。

介助を要する避難者のうち2人は理学療法等によりADLが明らかに向上しそうな状況に思えたうえに、そのうち1人は下腿義足の調整や断端袋等の物的支援を要していましたので被災していない切断患者からの義援物資として断端袋や歩行補助具を調達しました。

以上の全例に対して家族指導や集団訓練指導等の介入をしたので急場をしのげそうでしたが、1名に対しては理学療法士を315日と317日に派遣し、家族や保健師による機能維持訓練や歩行介助の指導を行いました。

327日に、リハ医が香取・海匝地域および、神栖・鹿島のリハ施設等を巡回し、被害状況や活動状況を確認しました。

佐原中央病院に関してはエレベーターが使用できず水もでないとのことでしたが、人力で患者搬送しながら365日体制のリハが継続できていました。小見川総合病院・東庄病院等、その他の香取・海匝地域の病院もリハ設備等に関してはダメージがないようでした。白十字病院は被害が大きいと聞いていましたが、スタッフにお会いできなかったので詳細を確認できませんでした。しかし、リハ室は被害なく普通に使用しているようでした。渡辺病院は老健への非難が終了し病院に患者が戻るとのことで、なんとか通常のリハ業務に戻れそうでした。小山記念病院はスタッフに会えませんでしたが、問題なく運用できているようでした。

まとめると、佐原中央をはじめとしてインフラの面で大変な不自由を強いられている病院は多いようでしたが、リハのほうはきちんと提供できている様子でした。損傷により緊急に機器を融通しなければならないということもなさそうでした。

325日より避難所における高齢者や障害者等の不活動対策について行政側と協議を開始しました。実際に行うべき介入においては療法士による治療よりも、一般人による日常的な余暇活動であるほうがより実践的であると考えて各方面との調整を行いました。市民のサークルに対するアプローチと行政側のシステム整備を同時に行い、46日より市民のサークルによる定期的な避難所訪問が開始されました。その時点で日中避難所に残って動かないような人は各避難所数名ずつ程度でした。

4/6にリハ医が市民のサークルによる不活動対策ボランティアに同席した際に避難生活者の居室を回診し、一時的に親戚宅等に避難していた要介護者が長期の避難生活に伴い親戚宅等から避難所に入ってくるような動きがあることを把握しました。3日の避難所生活のために歩行困難になってしまった認知症の老人に対して老人保健施設に緊急入所しリハを行うことをコーディネートしました。その後も同様のケースがでてくる可能性がありましたので、保健師が随時に当院リハ医に電話相談し、必要であればリハ医が現場に診察にいくようなシステムにしました。

今後は約2カ月後に仮設住宅への入居が開始されますので、その前後で環境調整や介助指導の問題が生じるのではないかと予測しております。現在、入居希望が締めきられた段階なので、専門職がどの程度の関わりをする必要があるのか、ニーズを調査したいと考えています。現状では、国保旭中央病院や周辺の協力病院のスタッフで十分な介入ができると考えていますが、調査結果により当地域のマンパワーで賄いきれないほどのニーズがあるとなった場合には県の作業療法士会等を通じて他地域の専門職による支援をお願いしなければならない事態もあり得るかと考えています。

仮設住宅の環境介入に関しては入居者がある程度選定されてからしか動けない事情もあり、4月末〜5月からのニーズ把握のための調査開始になってしまうのではないかと懸念しています。

最後に現段階での当科の基本的な方針を記したいと思います。

震災の被災地として多くの困難はありましたが、十分に当地域の人材で対応していくことができそうです。どうしても仮設住宅入居の時期に支援が必要であればお願いすることもあるかもしれませんが、それもさほど甚大な労力を求めるものにはならない見通しです。

むしろ被災してその大変さをよく理解できましたので、我々は岩手・宮城・福島の大変な地域に対して支援する側になるべきだと考えています。複数のスタッフが療法士協会を通じてボランティアに志願していますし、リハ医が直接支援に行ける機会があれば出ていく準備をしています。各士会においても当地域に対する支援に労力をさかれるよりも、まずは岩手・宮城・福島に対して何ができるのかということを優先して考えていただくことを提案します。

 

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「宮城県石巻市での活動報告(4月8日発)」山田睦雄先生(リハ学会HPより)

日本リハビリテーション医学会HPより許可を得て転載

http://www.jarm.or.jp/ic/ 


「宮城県石巻市での活動報告」

              流通経済大学スポーツ健康科学部

                     大学院スポーツ健康研究科 准教授 山田 睦雄

 

第1報:3月29日より私の主催するNPO法人( NPO法人 Medical Exercise and Training)の理学療法士、柔道整復師、日体協アスレティックトレーナーと4名で宮城県石巻市で活動しております。活動の中心は主に牡鹿半島です。こちらの漁村では大きな避難所は少なく、少数の家族が集まり、避難所を形成しておりました。

我々は、廃用症候群の予防に関するポスターやチラシ、セルフストレッチの方法が書かれたチラシをもって、実際に避難者の方々と一緒にストレッチや軽い運動を行うといった活動しております。また、避難所へ行けない高齢者宅へは直接ご自宅へ訪問して専門医である私の管理下で理学療法士により施術も行っております。また下腿浮腫の傾向のある方へは診察の上必要な方には弾性ストッキングを配ったり、弾性包帯し、家族の方へ巻き方の指導もしております。

 町から離れた湾岸沿いの小さな避難所へも物資は行き届いており、ADLよりももはやQOLの段階に来ていることを実感します。

 海岸沿いの漁村の避難所の高齢者の多くは、エネルギッシュで日中は自宅の片付けに出かけており避難所にはいないところも目立ちます。

我々は日中に外に出ることができない方々を中心に廃用予防の啓蒙と一緒にストレッチや運動を行っております。牡鹿半島の漁村よりも石巻市の被害のあった旧市街地の小学校の体育館や中学校にいらっしゃる方々のほうが活動性は低いです。

我々のような弱小NPOでは収容人数の大きな体育館では個別にチラシの内容を説明したり、ポスターをはるくらいしかできないので、できることをやっております。

本日南三陸町と石巻市の境の北上十三町の「高齢者福祉センターはまざき」にもにもいきましたが、こちらも物資は届いており避難されていたかたの中にも動けない方はほとんどいない状態で、日中は自宅の片づけをされておりました。しかしこの地域より先に進むと道路などはまだ回復しておらず水に埋もれており、牡鹿半島よりもかなり町の復旧は進んでいない状態でした。大川小学校があった地域もまだ水に埋もれておりました。

 

第2報:29日より私の主催するNPO法人の理学療法士らと支援中です。

本日までに石巻市の被害の大きかった雄勝町と牡鹿半島を周りました。

活動は一貫しており、廃用症候群の予防の指導ということで、ポスターやチラシだけでなく実際に運動指導やストレッチ指導を行っております。アルケア株式会社から提供いただいた弾性ストッキングも必要に応じて処方しております。避難所へ来ることができない自宅にいる高齢者宅にも周っております。

港町の甚大な被害の中で廃用予防の呼び掛けに耳を傾けていただけるのか最初は不安でしたが、取り越し苦労でした。高齢の方も積極的に話をきいていただけて、自分で行う軽運動指導に参加していただけており、次回の巡回を要望されており、毎日周る避難所が増えております。実際指導を行ったところは最低3回は巡回するようにスケジュールを組んでおり運動の定着に努めております。今後定着具合と運動の継続についてアンケートなどでフォローするつもりです。

避難所の生活および食料の物資はかなり充実しております。物資の希望をきくと酢などの調味料(塩、こしょう、しょうゆは普通にあります)が欲しいといいったことも聞こえてきました。

医療面も日赤、自衛隊衛生部隊、各種NPO(医師のいる)などがそれぞれをサポートして居る状態です。現場では小児の精神科領域の医師を求める声が多く聞かれており、臨床心理士も数多くサポートしております。

簡単ですが報告を終了いたします。

 

第3報:その後、牡鹿半島の土砂崩れをしていた荻浜地区の侍浜が片側だけ通行できるようになり交通の便がかなり改善されました。われわれは基本的には自衛隊くらいしか来ていないところばかりをまわっておりましたが、最近は他のボランティア団体も見かけることが多くなりました。牡鹿半島の避難所で、震災以前と比べ活動性の下がっている高齢者のいる避難所は殆どまわりました。

 毎日各NPO法人の代表を中心としたミーティングが行われており、メディカルの分科会で、参加のつど色々報告し、われわれよりマンパワーのある医療系のNPOに情報の提供をしてまいりました。

 前回は支援物資として、前回は「酢」の話をしましたが、今回は入れ歯の洗浄剤を持っていきましたらそちらもかなり喜んでいただけました。「いつもは水でしか洗えていないんだよ」と避難されている方がおっしゃってました。

 さて、その後の廃用予防の意識改善はどうかというところですが、われわれは個別指導をした場合と、グループ指導した場合に分けてアンケートしましたが、個別指導した場合より集団指導した場合のほうが、その後の個人での軽運動の定着がよいという印象を受けました。

 これも今後精査して学会に発表できるようにまとめさせていただければと思います。

 本日までチラシを配ったところも含めて、20箇所の避難所を回りました。 

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瀬田拓先生の提言「今リハビリテーションがすべき被災者/被災地支援」(全文)
東北大学病院肢体不自由リハビリテーション科の瀬田拓先生の「今リハビリテーションがすべき被災者/被災地支援」の全文転載の御許可を得ましたので掲載します。

元データは若林秀隆先生のブログです。 

http://rehabnutrition.blogspot.com/2011/04/blog-post_13.html

瀬田先生と若林先生に感謝致します。


【はじめに】

 平成23311日、未曽有の被害をもたらした大地震と大津波が東日本を広域に襲った。特に大津波が直撃した、岩手・宮城・福島の沿岸地域は、町全体が壊滅的被害を受け、本来急性期病院機能を担うはずであった石巻市立病院が完全に機能停止に至ったのが象徴的なように、医療システムが根底から崩壊した。震災より1か月が経過した412日現在、13千人超の死者が確認されたにもかかわらず、いまだ数万人の行方不明者がおり、避難所生活者も15万人を超えると言われている。懸命のインフラ復旧が進められているものの、沿岸地域で電気・水道・ガスが揃った場所は限られており、在宅生活者も大変厳しい状況が続いている。

 

 被災者/被災地支援としては、インフラ再整備を筆頭に幅広い分野の支援が必要とされるが、医療・福祉システムの再構築も急務であることは言うに及ばないことである。石巻市を例に挙げれば、救急医療の拠点になるはずであった石巻市立病院が機能停止したことは先に述べた通りであるが、1次医療を担うクリニックや診療所機能も崩壊している。伝聞情報ではあるが、石巻市の開業医の3分の1が津波で命を落とし、生き残った開業医も約半数が石巻市での再開業を考えていないという。そのため石巻赤十字病院が1次医療から3次救急までを、ほぼ一手で受け持つことになっており、石巻赤十字病院全体が疲弊の極みにある。

 

 救急・急性期医療を後方より支える、回復期リハビリテーション(以下リハ)機能や療養機能の低下・崩壊は、あまり取り上げられないが深刻である。元々沿岸地域の回復期リハ機能は、回復期リハ病棟整備の遅れから、一般病床や療養病床で行っていたという背景もあり、沿岸地域の一般・療養病床の病院崩壊は、事実上回復期リハ機能の低下に直結している。さらに仙台地区に目を移せば、回復期リハ病棟を運用していた、厚生年金病院48床、東北公済病院宮城野分院40床が建造物のダメージで機能停止に陥っており、沿岸地域の救急医療を仙台地区で補っても、それを下支えする回復期リハ機能が仙台地区でさえ大きく低下している現状にある。

 

 在宅障害者を支援するシステムの崩壊も同様に深刻である。仙台地区における介護保険サービスは、ガソリンが行き届くとともに、機能が回復する傾向にあるが、沿岸地域ではその兆しが全く認められない。また、障害者がこれまで使用していた補装具の紛失・破損が目立っており、自立支援法や医療による救済が急務である。さらに、在宅復帰を目標にしても、これまでに経験しない難しい在宅準備・支援を必要とする入院患者が多く、通常の医療の範囲内では、在宅復帰支援が行き届かなくなる可能性が高い。最近では、その存在価値が失われた感がある更生施設機能の早急な復興、あるいは今までの枠組みにない新しい、生活再建支援プログラムの創設が必要である。

 1次医療から在宅支援までを含む医療・福祉システムすべての領域に支援が必要であるが、このすべての領域でリハが関与しないところはない。すべての領域に対しリハが力強く直接的・間接的に支援することは、未曽有の災害からの医療・福祉システムを復興させるために不可欠なものと考える。

 

【リハが重点的に関与すべき項目】

1.リハマインドを持つ一次医療システムの復興・創設

2.急性期リハ充実化による、救急・急性期医療の質向上

3.回復期リハの回転率向上・病床復旧による、回復期リハ機能の復旧・創設

4.リハビリ機能を持つ療養病床復旧による、療養機能の復旧

5.甚大被災者でも生活再建を可能にする、更生機能の復古・創設

6.在宅被災者が安心して、人間らしく生活できるための介護保険サービス、自立支援法サービスの復旧

 

1.リハマインドを持つ一次医療システムの復興・創設

 1次医療システムを担うのは、プライマリーケア医(PC医)であり、直接リハ医が1次医療を担うことは少ない。甚大被災地では、多くのPC医が命を落としたり、被災地を離れる意向のため、1次医療システムを再興するにしても、十分な医師確保ができない可能性がある。そのため、今後被災地へのPC医の新規参入を誘導する施策が進むことと推測するが、その際、特に在宅支援等のリハ分野の知識や考え方が身についたPC医が新規参入することが望ましい。

 

 新規参入PC医に対し、最低限のリハ分野の知識や考え方、さらに今後も自己研鑽すべき領域にリハ分野も含まれることが理解できるような教育が受けられる場の創設が期待される。

 

2.急性期リハ充実化による、救急・急性期医療の質向上

 救急・急性期医療を担ってきた病院が、いくつも機能停止してしまった現状では、救急・急性期医療を担える病床数の量的確保が急務である。現状での急性期リハの第1の役割は、リハ介入により早期退院につなげることが可能な患者を増やし、急性期ベッドの量的問題解決に貢献することである。廃用症候群やその他の合併症により、退院可能な患者が長期入院に陥ることは絶対に回避すべきである。

 

 そのため急性期リハの充実化が必要で、リハスタッフの量的な充実化も当然期待するが、急務であるのは、リハスタッフの使命感やモチベーションの向上、訓練目的の明確化による急性期リハの質的改善である。

 

3.回復期リハの回転率向上・病床復旧による、回復期リハ機能の復旧・創設

 回復期リハは、量的な低下が著しい。量的低下の第1の原因が、機能停止した回復期リハ病棟、事実上回復期リハ機能を持っていた療養病床の機能停止であるが、機能が生きている病院であっても、回転率の低下により、機能的に量的低下に陥っているところが、いくつも存在する。

 

 元々東北地方の回復期リハの回転率は低く、正確なデータではないが、脳卒中の回復期リハ病棟平均在院日数は約100日程度と思われる。機能が生きている回復期リハ病棟に、リハ科専門医等が強力に支援することで、これまでと同条件の患者の平均在院日数を2030日短縮することができれば、量的問題を大きく解決することになると思われるとともに、これはまさに質的改善そのものでもある。

 

 次に新規参入回復期リハ病棟を創設、支援することで、直接量的問題の解決を図りたい。私自身は、白石市に60床で新規参入予定であった公立病院を、4月初旬より直接支援しており、412日現在、脳卒中と骨折患者の回復期リハが展開できる体制が整いつつある。スタッフ数の問題で当面は40床までの稼働になる見込みであるが、半年後には、脳卒中、骨折、脊損(対麻痺)、下腿切断の回復期リハを、1年後にはあらゆる回復期リハ対象患者に対応可能な回復期リハ病棟にすることを目標としている。

 

 しかし、本来リハは急性期から回復期、維持期のすべてを、その患者が居住する地域で完結させることが望ましく、沿岸住民の回復期リハは、本来沿岸地域やその近隣で行うべきである。白石市や仙台市でもすでに遠隔地であり、関東やその他の地域で回復期リハを行うことはかなり無理がある。そのため、沿岸地域の近隣で、ある程度インフラが整備された地区に、新規回復期リハ病棟が創設されることが期待される。根拠のある数字ではないが、回復期リハ病棟100床、回復期リハ適応患者ではないが、リハを前置きすべき患者にも対応できる一般病床または療養病床50床が必要と考える。

 

4.リハビリ機能を持つ療養病床復旧による、療養機能の復旧

 療養病床は、医療的処置が必要な要介護者が長期に入院するためだけでなく、回復期リハの基準に合致しないが、リハを前置きすべき状態の患者に、回復期リハ病棟に近いレベルのリハを提供するために利用されることがある。前述した通り、根拠のある数字ではないが、沿岸近隣地区に50床程度必要と考える。

 

5.甚大被災者でも生活再建を可能にする、更生機能の復古・創設

 津波被災者の生活再建は、身体障害のない被災者でも困難が予想される。避難所生活者が急性疾患を発症し、片麻痺や対麻痺のような重い障害が後遺した場合、生活再建は困難を極めると推測される。このような患者に対しては、既存の回復期リハ機能による、在宅準備援助では十分対応しきれないため、対策が必要である。

 

 回復期リハ病棟の入院期間延長により、解決できる場合もあると思うので、被災者の回復期リハは当面入院期間の制限を不問にすることが望ましい。しかし、それでも医療による援助のみでは解決できない患者が続発すると予想する。そのような患者に対しては、十分な時間をかけて、介護保険法、自立支援法をはじめとする、あらゆる制度を利用しながら生活再建を図る必要があり、更生施設や老健施設による生活再建援助を期待したい。特に更生施設は歴史的に、そのような役割を果たしていた時期がある。更生施設による生活再建機能の復古を期待したい。長期的には全く新しい枠組みによる、生活再建支援プログラムが必要なのかもしれない。

 

6.在宅被災者が安心して、人間らしく生活できるための介護保険サービス、自立支援法サービスの復旧

 入所サービス、通所サービス、訪問サービス、介護用品のレンタル等、介護保険サービス全般の復旧なくして、要介護者の安定した在宅生活は成り立たない。人間らしい生活を維持することを支援する介護保険サービス全般の復旧が期待される。

 

 介護保険サービスの普及により、自立支援法は以前より役割が縮小されたが、介護保険非適応年齢の障害者へのサービス提供や、介護保険サービスでカバーしきれないサービスの提供を担っており、現在も障害者生活支援の1つの柱であることに変わりはない。今回の被災により、医療や自立支援法で支給された補装具が紛失したり破損してしまったケースが多数報告されており、早急な対応が必要と考える。事実上生活用具となっている補装具の医療での再処方は、現行制度では難しく、訓練期でなくても被災による紛失・破損であれば、前回作製の補装具を医療で再作製することを認める特例を期待したい。また、自立支援法での支給をする場合は、申請から支給まで、これまでにないスピードで行うことが求められるとともに、従来の予算枠を大きく超過することが予想されるため、審査方法の再検討と支給可能な予算確保が必要と考える。

 

 避難所生活者、仮設住宅生活者の支援も、当然忘れてはならない。特殊生活環境による、急性疾患や精神障害の発症をまず抑制する対策が必要であるが、生活不活発が招く病態への対策も同時に必要である。リハ専門職がその能力を最大限発揮することで、運動指導のみならず、環境調整、介護用品や補装具の利用等さまざまな方面から活動性向上を図る対策を打ち出すことを期待したい。

 

【おわりに】

多くの命を奪った大津波だが、生き残った人の多くが、自身が生き残った意味を考えていると思われる。また、自身が生き残った意味を求めていると思われる。その答えに近づけるリハ支援が、真に有効なリハ支援であると私は考える。国際生活機能分類(ICF)で言えば、「活動」の支援が重要であることは否定しないが、一時の活動向上ではなく、生活全般の継続する活動向上(生活の変容)につながる支援でなければ意味がない。すなわち、「参加」の支援を積極的に進めていくことが大切である。もっと分かりやすく言えば、「役割」の再獲得につながるようなリハ的支援が大切ということである。そしてこの時、支援者には、リハ支援における役割を通常よりもかなり広義にとらえることができるセンスが求められる。孫が喜ぶ祖母の笑顔も立派な役割である。リハがどれだけ広い視野で被災者/被災地を支援できるかが、試されているのだと思う。


| 現地情報 | 16:55 | comments(0) | trackbacks(0) |
リハビリテーションが必要な人はどこにいる(リハ医の独白より)
仙台市長町病院水尻先生のブログ『リハ医の独白』が更新されました。


県のリハビリテーション関係者が集まって情報交換を行った。次のようなことが話し合われた。

 震災後、外傷や脳血管障害はさほど増加していない。問題は、高齢者や要介護者が低体温や低栄養などの劣悪な環境にさらされていることである。被災し、歩行補助具や装具、福祉用具を失ったものもいる。栄養補助剤や医療材料などの物資不足も問題となっている。リハビリテーションのニーズは....

以下、先生のブログをお読み下さい。




| 現地情報 | 03:14 | comments(0) | trackbacks(0) |
日本リハビリテーション医学会より被災地からのレポート
 

被災地からのレポート

<4.8宮城発 宮城県リハ科医からの震災レポート(PDF)>

<4.6宮城発 東日本大震災とリハビリテーション:被災地での3週間(PDF)>
※リハビリナース2011年3号から転載 (発売日:4月28日,掲載号:リハビリナース2011年3号)

<4.1宮城発 宮城県の地域リハレポート(PDF)>

<3.31岩手発 いわてリハビリテーションセンターと震災後のリハビリテーション活動計画(PDF)>


| 現地情報 | 03:00 | comments(0) | trackbacks(0) |
被災者の栄養状態が心配…「ご飯・パンだけ」続く(m3.comより)
 東日本大震災からまもなく1か月。長引く避難生活で被災者がビタミンなどの必要な栄養を取れない恐れが出てきた。支援に携わる栄養士らは「一刻も早い対策が必要」と訴えている。

 日本栄養士会(東京)は、先月13日に緊急対策本部を発足させ、被災地支援ができる栄養士を全国から募った。第1陣として、宮城県気仙沼市に派遣されていた専務理事の迫(さこ)和子さんは「まだおむすびとパンといった炭水化物しか届かない避難所もある」と現状を話す。

 阪神大震災時には、1週間程度で、周辺から弁当などが届いたという。しかし、今回は「被災地が広く、避難所が点在して、物流も途絶えている。救援物資のご飯とパンだけの災害初期の食事がこんなに続くのは想定外」と話す。

 同会会長で、対策本部長も務める中村丁次(ていじ)さんは、「炭水化物をエネルギーに変えるには、ビタミンB群が欠かせないが、体には数週間しか蓄積できない。肉や野菜などが届かない所では、すでに欠乏に陥っている可能性がある」と心配する。

 ビタミンだけでなく、たんぱく質不足が続けば、筋力が落ちる。管理栄養士で同志社女子大教授の小松龍史さんは「体重の減少や体がだるいなど不調が表れている人は、ビタミンやたんぱく質、ミネラルなどの栄養が欠乏している可能性がある」と注意を促す。

 特に糖尿病や腎臓病など食事療法が必要な持病がある場合は管理栄養士のアドバイスを受けたい。中村さんによると、減塩しょうゆなどの「病者用食品」が手に入らないか、医療機関などに聞いてみるのも手だという。「糖尿病の人は、少しずつ食べたり、おかずとご飯を一緒に食べたりすれば、血糖値の急上昇を防げるでしょう。塩分制限がある腎臓病の人はみそ汁の量を少なめに」

m3.comニュースより http://www.m3.com/news/GENERAL/2011/4/10/135133/?pageFrom=m3.com
| 現地情報 | 21:12 | comments(0) | trackbacks(0) |
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